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SSもどき そして俺は前髪を上げた

追記に…
そして俺は前髪を上げた

 国王国王妃の急逝の知らせを受け、俺はクイードに急ぎ帰国することになった。諸国遊学中だった自分にその訃報がもたらされたのはだいぶ遅く、俺は確かに焦っていた。
『折角、俺は何をすべきか、あの子に会って迷いが晴れたのに、俺にとってもう1人の1番大切な人が、アルが、助けを必要とする時に、王都にいなかったなんて!』
後悔してももう遅い。王都の急勾配の大通りは王崩御の影響をまだ残し、馬車や行き交う人が重く詰まっていた。
「これでは、歩いた方が早い、歩いていく!」
「お待ち下さい、ロジオン様! 今ご城下の治安は非常に悪く!…」
静止する家臣の声を振り切って、俺は裏道を走り出していた。案の定、家臣の言うとおり、すぐ貴族誘拐脅迫狙いのゴロつきに絡まれる事となり、そして、彼に会った。

******(ゲーム メモリーエピソード)

 私をゴロつきから護ってくれた少年をリンドグリーン邸に預け、俺はまずアルとの謁見をと王城に向かった。流石に急なことなので謁見は叶わず、遠巻きに宰相に子供のように扱われ玉座に甘んじる彼を、新しい王を、小さく眺めみるに終わった。
 それでもアルは俺を広間の雑踏に見つけてくれたようで、笑顔とは言えないながらも、ほっと溜息を付くような頷きを、俺にしてくれた…、と思う。

******

 リンドグリーン邸に戻ると、俺は母に捕まって、それは正論の説教を受ける事となった。
「ロジー、こんな時に城下に護衛もなく飛び出すなんて、どれだけ自分の行動が愚かだったか、反省なさい!」
確かに、その件については本当に自分が短慮だった。
「すいません 母さん。でも、だから彼に出会うことも出来たんです。彼はどうです?目を覚ましましたか?」
 母さんはリンドグレーンに嫁す前は、祖父の教え子であり助手だった。発明はもちろん、科学、医学の教養は正直、伴侶である父さんの遥か高みにある。今回の場合、外の医者を呼ぶことはなく、対応は全て母さんだろうと、俺は予想してそう質問した。
「あの子が倒れた原因は疲労と飢えね。クイード国民の大半が抱える症状だわ。でもね…。いいわ、語るより見た方がいいわね。」
 母に連れられて、あの少年が運び込まれた客間に入った。丁度メイドが少年の身体を濡れた医療綿で拭いているところだった。その手は、震えている。
「…これは」
俺の声も震えた。身体中、傷だらけなのだ。ただの切り傷の跡ではない、縫合された傷跡。多分この少年はケロイド体質があるようで、どの傷も綺麗な縫合跡とならず、残酷に盛り上がっていた。いや、体質のせいだけじゃない、あまりよいメス捌きではなかったのか? それか、ワザと傷を残し、回復までの記録を取ったのか?
「背中も。寝返らせて、優しくよ」
母にそう言われ、メイドがまだ小さな身体を半転させると、背中にも同様の傷が…。
「……ひどい」
「ええ、ひどいわ。性的虐待を受けていたと思われる形跡もあるわ。もう、医学も学び始めているから大丈夫よね?」
「はい 分かります」
「この子は、何らかの人体実験の被験者だったようね。ロジー、彼に助けられた時、子供とは思えない攻撃、速さだったと言ったわよね?」
「はい 狼の野獣のようでした」
「この身体で…、倒れるギリギリの体力で、見ず知らずの貴族のお坊ちゃんのあなたを、助けてくれたのよ?」
「…はい」俺の声はすでに掠れていた。
「この子は当家で預かります。まだ目を覚さないけど、目が覚めたら、あなたはこの子への恩を返しなさい。我が家に迎えると、彼の心を開かせなさい!」
「はい!」
 俺は、そのまま少年の枕元の介護役の椅子に座り、メイドから、彼の身体を拭く役を交代した。
******
 その夜、父は城から帰らなかった。それくらい、王城は大変なのだろう。父にとっては、一緒に育ったクイード王と、実の姉を同時に亡くしたのだから。
(…未完、続く)
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プロフィール

崔西

Author:崔西
HN:崔西(さいせい)
ジェリー・アンダーソン作品、日本のTV人形劇、西部劇TVドラマ「BONANZA」、銀牙再燃中、永久保オカルト漫画。
■PN:崔西沙波(さいせいさわ)※旧PN灼彗がむら(しゃくすいがむら)は2020年8月で終了改名しました。 サークル名:一筆啓上仕り候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう) 
■サークル活動:2021は無目的、無制限、無計画(万年マニアの三つの無)
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